2018-01-28

魚(メダカ)の誕生

【5年 メダカの誕生】

ポイント
顕微鏡でメダカの卵の中で心臓が動く様子を見たり、プランクトンの観察をしたりする楽しい学習です。

1、ねらい(基礎的知識を中心に)

①メスが産んだ卵がオスの出した精子と結びつくことを受精という。(生命の始まり)。卵を産む数は、子どもの育て方と住んでいる環境に関係があることがわかる。
②受精卵の中で、メダカは成長して稚魚になることがわかる。
③稚魚は、成長するために水中の小さな生き物(プランクトン)を食べることがわかる。

2.学習指導計画

(1) 教科書を見ると

「生命のつながり」として1~5の構成で、植物と動物の誕生から成長の様子を関連させて学習する構成になっている。

1学期(1)植物の発芽 (2)植物の成長 (3)メダカの誕生 (4)人の誕生
2学期(5)植物の実や種子のでき方
この中で、メダカの学習は1学期の(3)に位置づいている。

◆教科書の「メダカのたんじょう」学習の流れは、
1次 メダカの卵の変化(5時間)
①雄と雌の見分け方と飼育のセット
②メダカの卵の観察(双眼実体顕微鏡と解剖顕微鏡の2種類の使い方)
③④メダカの卵の変化の観察
⑤メダカの卵の変化のまとめ
教科書の記述
「めすが卵を産み、おすが精子を出す。たまごと精子が結びつくと、卵の中で変化が始まる。」
「卵と精子が結びつくことを受精といい、受精した卵のことを受精卵という」

 2次 水の中の小さな生き物(プランクトン)を顕微鏡で観察
⑥池や小川にすむ魚は、餌を与えなくても育っていることについて、話し合う。
⑦メダカの食べ物を調べる。
⑧「たしかめよう」「学んだことを生かそう」
検討してみると、
◆学習指導要領で、「動物では受精(受精卵)と受精卵の中での成長ということが出ているが、植物では受粉はあるが子房が出ていない(めしべのもと)」ので教科書にその記述はない。
しかし、  
動物:受精⇒受精卵  
植物:受粉⇒子房が実になる 
と教えることで、生物について体系的な理解ができる。植物と動物の繁殖の観点で教えることが大切である。それによって生物が子孫を残す営みとその仕組みをしっかりと理解することができる。
◆教科書では、いきなり受精卵の観察から始まっている。これは学習指導要領により「受精に至る過程は扱わない」という指示の反映である。しかし、ただ「観察してみよう」では、断片的な知識を覚えるだけになってしまう。
◆そこで、学習の初めに、生物の種類によって卵の産み方・育て方がどうちがうかに着目させ、植物学習と関連させ、何を学ぶのかを明らかにさせたい。
◆学習課題「何のために何を観察するのか」を自覚させるための課題設定から授業を始める。そのことによって、学習指導要領をふまえつつ、生物が子孫を残す繁殖について科学的に且つ意欲的に学ぶことができる。生命のつながりという5つの単元を通して、生物が子孫を残す営み(繁殖)のための仕組みやねらいを意欲的に学習するための教材と配列を工夫して指導計画をつくる。
1次:メダカの卵の変化 5時間
【1時間目】雄と雌の見分け方と飼育のセット(水槽・ペットボトル)
・卵・精子・受精・受精卵
【2時間目】メダカの卵の観察
・双眼実体顕微鏡と解剖顕微鏡の両方の使い方を教える
【3・4時間目】メダカの卵の変化の観察(観察カード)
・卵の中での成長の様子を顕微鏡の使い方を教えて観察
【5時間目】メダカの卵の変化のまとめ
・めすが卵を産み、おすが精子を出す。たまごと精子が結びつくと、卵の中で変化が始まる。
・卵と精子が結びつくことを受精といい、受精した卵のことを受精卵という

2次 水の中の小さな生き物(プランクトン)を顕微鏡で観察(3時間)
・池や小川にすむ魚は、餌を与えなくても育っていることについて、話し合う。
【6・7時間目】メダカの食べ物を調べる。
【1時間】「たしかめよう」「学んだことを生 かそう」

(2)学習指導計画(9時間)

(1)動物の誕生

課題1:動物が次の世代を産む数を調べ、特徴を見つけよう
 →少なく生む動物は親が食べ物を与える。多く産む動物は、生まれたら自分の体
  の中の養分でしばらくの間育つ

(2)(3)メダカの誕生

課題2:メダカが誕生する時のオスとメスの役割は何か。
→オスとメスの体の形の違いと水中での受精・産卵の時の役割と関係づけて考え
 る。

(4)(5)顕微鏡の使い方(メダカの観察に先立って行う。) 

・顕微鏡の使い方
     ・双眼実体顕微鏡と解剖顕微鏡

(6)(7)メダカの受精卵 

課題3:受精卵の中でメダカはどのように成長しているか観察しよう。

(8)(9)水中の小さな生物(めだかの食べ物) 

課題4:プランクトン図鑑をつくろう

4.授業の流れ

(1)動物の誕生

課題1:動物が次の世代を産む数を調べ、特徴を見つけよう

◆ 魚の産卵数の表をもとに、討論を通して学習課題をつくる。意欲的に学ぶ工夫)

表(牛・鳥・魚の卵の数と産み方)  (2時間)…子どもの実態で

種類   名前    産む数(予想→正解)   産み方・育て方
ほ乳類   牛     →1頭        母牛が母乳を与える
鳥類   すずめ    →数個の卵      親がえさを取ってきて与える
魚類   サケ     →2000~3000個の卵  川底に穴をほって産みっぱなし
魚類   マンボウ   2億~3億個      海中に産みっぱなし

◆ 予想を各自でノートに書いてから、見たこと・聞いたことなどを発表し正解を書き込んでいく。

◆ 発問:卵の数がこんなに違うのは何故だろう?(補助発問:なんのために卵を産むのか) 子ども:卵を産みっぱなしの動物は、たくさんの卵を産まないと子孫を残せない。親が育てる動物は少なく産む。

◆ 教師の発問(補助発問と話し合いを通して)問:牛は親と同じ形の赤ちゃんが生まれる。鳥は卵の中から親と同じ形の雛が生まれてくる。なぜ卵 から出てくるときは親と同じ様な姿の雛になっているのだろう?
 ⇒子どもの予想 卵の中で成長して雛になるのではないか。問:卵の中で何を食べて成長するのか。インゲンの学習
を思い出してみよう。 ⇒子どもの予想 インゲンは栄養分が種の中にあった。魚の卵も同じではないか。
単元の学習課題提示
・卵の中でメダカはどのように成長するのか観察しよう。
・卵から産まれる稚魚は何を食べて成長するのだろうか。

【動物の誕生の授業の板書】




【動物の写真】素材フリーの画像を活用










【子どものノート】
〇 考察 産む数が少ない動物のとくちょうは親がえさをあたえるということである。産む数が多い動物のとくちょうは産んだらそのままとして、マンボウはまきちらしたままである。

〇 スズメ:春から夏頃(3-8月)にかけて行われる。1年に2回程度繁殖すると考えられている。毎日1個の卵を産み、1つの巣に産む卵の数は4-8個とされ、5-6卵が75%を占める。

〇 マンボウ:最大で全長3.3 m、体重2.3 t 。メスが一度に産む卵の数は3億個に達するともいわれ、最も多く卵を産むせきつい動物とされる。卵は親に保護されることもなく海中を浮遊しながら発生するため、ほとんどが他の動物に食べられてしまい、成長できるのはごくわずかである。孵化した稚魚は全身にとげがあり、成魚とは似つかない金平糖のような姿をしている。

(2)(3)メダカの誕生


【メダカの誕生の授業の板書】




課題2:メダカが誕生する時のオスとメスの役割は何か。
 →オスとメスの体の形の違いと水中での受精・産卵の時の役割と関係づけて考える。
     メダカの産卵と飼育容器のセット(2時間扱い)
◇ オスとメスの見分け方
 オスのしりびれは大きくて平行四辺形で、尾びれは切れ込みがある(電子黒板)
 その理由を考える。
流れる川の中で確実に受精できるように、オスはメスの横に寄り添い、背びれとしりびれでメスの体を包み込むようにする。そのためにオスの背びれは切込みがあり、しりびれはメスより大きく平行四辺形の形をしている。ビデオで確かめたり、画用紙の模型を教師が手に持ってやってみせたりするとよくわかる。体の形の違いにはちゃんと訳があることに気付かせる。

◇ NHK5年生用テレビ番組の録画を見せる(産卵の様子)・・・オスが精子をかける時、水中で確実にかかるようにしりびれをメスの体に巻き付ける様子の場

◇ 受精・・・教科書の記述とビデオで確認する(板書)
「メスが産んだ卵がオスの出した精子と結びつき卵の中で変化が始まる」
「卵と精子がむすびつくことを受精といい、受精した卵を受精卵という」

◇ 2学期の植物の受粉につながるのでオスとメスの役割を押さえておく。

◇ オスとメスの見わけ方を教科書で確かめ、実際に確認する。
(ビーカーに1匹入れたものを多数用意して班ごとに確かめさせる)
(ペットボトルに班ごとにオス・メスを入れて飼育セットをつくって観察した年もある。)

◇ わかったことをノートにまとめる。
(何度も使うので、オス・メスの形を画用紙に書いて作っておく)

【子どものノート】
〇考察 オス・メスの役割は子どもを残すことだと思いました。オスは精子をかけ、メスは卵を産む。そうして、子孫を残していくのだと思いました。

〇考察 メスが卵を産むときに、オスの精子が流れていかないようにオスはしりびれでつつむようにして受精する。

〇オスは、メスが卵をうんだとき、精子をかくじつにかけられるように、しりびれが、平行四辺形、背びれに切り込みがはいっている。メスは、卵をうむのが役割。予想だがしりびれは、三角形でたまごをうみやすい。

〇オスは、メスをつつんで受精するために→(ノートに絵でかいて説明していた)

〇最後に、メダカの水槽にクラスで育てて産卵させるようにセットして世話の当番の相談をする。

(4)(5)顕微鏡の使い方(メダカの観察に先立って行う。)

◇ 顕微鏡の使い方 
◇ 双眼実体顕微鏡
◇ 解剖顕微鏡
過去に購入した年度によって様々な顕微鏡があるので使い方の指導には時間をかけて丁寧に行う。
・運び方と使い方    ・光源の調整
・倍率 低→中→高   ・スライドガラスとカバーガラスの使い方
・調節ねじの使い方    他(スポイトなどを使って)
観察するもの
・理科室にある様々なプレパラート   ・でんぷん
・解剖顕微鏡では、理科室水槽にいるプラナリア(1穴ホール式使用)や小さいカワニナなど
顕微鏡観察カードに記録してノートに貼る。

(6)(7)メダカの受精卵

【受精卵の中での成長の授業の板書】






課題3:受精卵の中でメダカはどのように成長しているか観察しよう。
◆受精直後のものや体の形が出来てきているものなどを何種類も観察させる。
・頭・心臓・血液の流れ・目などの観察
・理科室と各教室で毎日受精卵を採卵して受精卵の何日目か記録しておく(積算温度と孵化の話)
・稚魚の観察(腹が膨れて栄養分があることの観察)
・顕微鏡の使い方の指導・・・双眼立体顕微鏡と解剖顕微鏡  
 
【子どものノート】・・・気づいたことを図に書いて、そこに添えて書いた文章です。
〇血液が流れていた。血液の流れが見えた。とてもさかんに動いていた。

〇血流がすごく見えていて、うねうねしていた。体の形がめだかになっていた。心臓もどくどく動いていた。

〇血流は一方通行していた。体の形は、目が大きく頭は丸い。時々ぴくぴくしていた。

〇少し顔みたいで血液が小さな丸いつぶのように流れている。時々、心臓が動いて目ができている。少し、ちょこっと動いたりしている。体のか形は小さいおたまじゃくしみたいな感じ。

〇体が丸まり目がはっきり。血液が流れていてたどっていくと心臓があった。
3日目 体はできていないが、あわのような周りにウニョウニョしているものがあり、毛のようなものがはえている。
4日目 色は黄色で真ん中に黒いまるがあった。あかりをつけると目がまっ黒だった。卵のまわりは、毛のようなものでつつまれていた。心ぞうは、大きくなったり小さくなったりとうごいていた。
6日目 体が丸まり目がはっきり。体がピクッとうごいた。血が流れていて、たどっていくとドクッとうごく心ぞうがあった。
8日目 心ぞうがドクドク動いていた。血液はとうめいで速く流れていた。目がとても大きく黒かった。
8日目 あかりをけすと、目がどうなっているかわかった。血液はホースの中を流れる水のように速かった。小さい粉みたいのが流れていた。体は丸まっていてときどき1回転した。心ぞうはバクバクと動いていた。

 (8)(9)水中の小さな生物(メダカの食べ物)

「水中の小さな生物の授業の板書】




課題4:プランクトン図鑑をつくろう
◆多くの種類のプランクトンの観察をする工夫
5年生の総合の時間でのバケツ稲栽培が終わった秋にその土をもらって池のそばに大きなプラバケツを3つ用意しておく。春になったらそこに学校の池の水を入れておく。これを毎年続けておく。バケツの中に様々なプランクトンが増え、卵で冬を越すものもある。

今年度観察出来たものは、
カイミジンコ、ケンミジンコ、マルミジンコ、ミジンコ、ツリガネムシ、エナガワムシ、ソウリムシ、アブラミミズ、ノープリウス幼生、フナガタケイソウ、ハリケイソウ、オビケイソウ、ミカズキモ、アオミドロ、ボルボックス(かなりレア)、イカダモ、ボウウラの17種類でした。

◆教科書だけでは名前がわからないので、学校図書館のプランクトン図鑑の本をコピーして厚紙に貼り、黒板に張り出します。3つのバケツからとってきた泥水をビーカーに小分けしてABC・・・・と名前をつけておきます。子どもたちは、顕微鏡で見つけたら、班で共有し観察カードに書きます。 。そして、黒板の厚紙のプランクトンの絵カードの下に班の名前と見つけたビーカーの名前を書きます。それを見て、ほかの班の子どもたちはどのビーカーでどんなプランクトンが見つけられるか、それは何倍にして見つけたらいいかもわかります。

◆情報を共有しながら、夢中になって観察します。観察中にボウフラから蚊が生まれてきたり、動物性プランクト
ンが植物プランクトンを食べているところを見つけたりすると、他の班の友だちにも見せてあげます。

【子どものノート】
〇クチビルケイソウ 名前の通りクチビルに似ていて、緑でした。

〇プリウス 幼生は中心に赤丸があります。足があり、とても動きが速い。

〇ケンミジンコ メイジンコの仲間で、しょっかくがあり、足が細い。

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